ピアスを揺らせ

去年の春先
毎日飲み歩いて酔っ払ってくだ巻いて、学生と社会人の境目もわからないまま気がついたら入社してた。だからかわからないけれど、研修が始まっても毎日ぼーっとしてた。

 

会社の同期に、銀縁メガネの真面目そうな女の子がいた。研修の班が一緒になった日があって、頭がキレて優しかった。他の人みたいに焦って友達を作ったり、周囲に合わせて笑ったりしていなくて、シャンとしてる印象。

 

その子の両耳に、小さなピアスがついてるのをみつけて、へえと思った。これまでの人生のどんな場面で開けたのか、なんとなく想像がつかなかった。

 

 

わたしの両耳にも一つづつピアス穴が開いている。

 

中3の頃、学校でピアスブームが到来した。わたしの周りのそんなにイケイケでない子たちまでもが一人また一人と開けはじめて、羨ましかった。今日◯◯ちゃんが開けるらしいよ、と噂が回れば、昼休みの女子トイレに人集りが出来てヒーローになれる。耳に穴が開いた子は昨日までとは別人のように見えた。開けれなかったわたしは、一足先に行ってしまった友人たちの耳についている透明のピアスが眩しくてしょうがなかった。

 

大学に入ってすぐの春、親の反対を無視して開けた。ずーっと開けたかったからね。怖かったから皮膚科の口コミをみて、評判がいいところを探して、放課後開けに行った。

 

一ヶ月くらいすると穴が安定して、透明のじゃなくて自分の好きなピアスをつけれるようになる。それからずっと、外出するときはほとんど欠かさず、わたしはピアスをつけてる。思い入れが強いからか、ちょっとだけテンションあがる。

 

 

同期のあの子、それから仲良くなったわけでもなんでもないけれど、たまにぼーっと思い出す。小ぶりな銀色のピアスと研修中に着てた紺色のスーツが似合っていて素敵だった。どこかの日にピアス、思い切って開けた日があったりして。